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早期見直しが求められる
死因究明制度
死因をしっかりと究明しなかったために、重大な犯罪や事故が闇に葬られている事実があることをご存知だろうか。死の真相を突きとめるためには解剖などにより遺体を調べる必要があるが、全ての案件に対して、十分に行われていないのが現状だ。そんな中、死因究明の在り方を見直す動きが出てきている。この問題とどのように向き合っていくべきかを、考察してみた。
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■曖昧な死因で片付けられる死亡事件

保険金殺人などの犯罪やガス器具の不具合による中毒、子どもの虐待─近年、これらに起因する死亡事件が単なる病死と取り違えられるなどの問題が相次いで明らかになっている。

遺体を調べて犯罪性が疑われれば、法医学者などによる司法解剖や行政解剖で死因を特定することになる。だが、現実には曖昧な死因で片付けられたために重大な犯罪や事故が見落とされた例は数多く存在すると言われている。不審死の真相は、状況をよく調べ、遺体にメスを入れて検査を尽くさなければ、正確には突き止められないだろう。もし見誤れば、憎むべき犯罪を永遠に闇に葬ることになりかねない。

■日本における死因究明

日本において変死体は、刑事司法と公衆衛生行政という、目的の異なる二つの枠組みで扱われてきた。

警察から駆けつけた検視官や署員が遺体を外部から調べ、犯罪の疑いがあれば、大学の法医学教室へ司法解剖を依頼することになる。一方で事件性が薄い場合には、伝染病対策などを目的とした行政解剖に委ねることになるという。

2008年における全国の警察が扱った変死体は16万1,838体で、10年前の1.5倍に増えた。しかし、公衆衛生が主目的の行政解剖を含め、解剖された遺体はそのうちの僅か9.7%。行政解剖を担う監察医制度がある5都市のうち東京23区や大阪市、神戸市を抱える3都府県は21〜15%だが、他の道府県は大半が10%以下だという。先進国の中では極めて少ない数値である。

こうした現状から、解剖など医学的検査の前に、まずはじめに犯罪性の有無を判断する現行制度の欠陥を指摘する声もある。高齢化に伴う孤独死などの増加で死因がはっきりしない変死体が増える可能性は高く、やはり小手先の改善では限界があるのだ。

犯罪捜査が優先されるあまり、それ以外の調査が疎かになりがちなのが日本における死亡究明の現状。責任の所在を明確にし、犯罪の発見だけにとらわれることなく死因を究明する態勢をつくることが必須だろう。犯罪の見落としも多発している今こそ、根本から制度を見直す時期にきていると言える。

■これまでの取り組み

とは言え、これまでも様々な組織により改善策が講じられてきた。

警察庁では、07年の相撲部屋力士暴行死事件以降、検視官を増やし、遺体をコンピュータ断層撮影(CT)で調べる「死亡時画像診断(Ai)」を導入したのだ。検視官を支援する携帯型音波検査装置も配備するなど、改善に努めている。

また、日本放射線科専門医会のメンバーらは財団法人を設立して、専門医がAiの分析をインターネット経由で行う「Ai情報センター」を発足させるなどの動きも見せているのだ。

■求められる制度の見直し

こうした中で、行政の動きも活発化してきている。制度の見直し構想の土台と目されているのが、野党時代の民主党が3年前に国会に一度提出した法案だ。

まずは、死因を調べる責任を警察に一元化し、警察庁に「死因究明局」を設ける。次いで、法医解剖の態勢整備のため内閣府に「法医科学研究所」を置き、監察医務院や法医学教室と連携し、各地で執刀医も増やす、という構想だ。 

警察庁も10年度、庁内に法医学者ら有識者による研究会を設置して、米国や欧州などの制度も現地調査し、検視や解剖の在り方を見直す方針を示している。

今後は警察庁のみならず、厚生労働省や文部科学省など死因究明に関係する省庁が連携し知恵を出し合って、犯罪を闇に葬る抜本的な制度改革を進めていくことが期待される。

■死因究明制度のこれから
制度の見直しが進む上で一つ気懸かりなのが、これからの教訓になるような事例が司法解剖で明らかになっても、「捜査上の秘密」を理由に伏せられてしまうことである。死者が残してくれた情報を、生きている者の安全・安心のために、是非とも生かしてもらえるよう努めてもらいたい。
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