
最近、街の色が少しずつ変わってきているのをご存じだろうか。従来のオレンジ色や白色の街灯から、青色防犯灯へと移行する自治体が全国的に広がってきているのである。
ことの起こりは、遠く離れたスコットランドからの報告だった。平成12年にスコットランドの都市・グラスゴーにてオレンジ色の街路灯を青色に変えたところ、犯罪の発生件数が大幅に減少したというのだ。街灯切り替えの本来の目的は景観改善のためだったそうだが、思いの外優れた副次効果が現れたのである。そこから端を発して世界的に青色防犯灯の普及が広まり、日本でも同17年に奈良県警主導の下で奈良市秋篠台地区に初めて導入された。
そこでは、照明機器業者の協力を得て既設の防犯灯を青色のコンパクト型蛍光灯に無償交換し、7基からスタート。道路のみならず住宅地や駐車場・駐輪場へと徐々に設置数を増やしていった結果、なんと1年間で夜間の犯罪発生件数が21%も減少したというのだ。奈良県ではこの取り組みの成果を受けて県内全域で青色防犯灯の設置を広め、それに追随する形で他府県での普及も広まっている。
では、なぜ青色防犯灯には犯罪抑制効果が期待できるのだろうか。その核心にあるのは、「色」──つまり「青色」の色彩効果に大きな理由が隠されているのである。
まず一つ目として挙げられるのが、プルキニエ現象と呼ばれる、光の波長による効果だ。青色防犯灯は白色灯に比べ明るさは暗く感じられるものの、波長が短いため広範囲を照らし出す特徴があり、遠目が利くのである。つまり、人目を避けたい犯罪者にとって不利な状況を生み出し、犯罪を抑制するのだ。
もう一つ、最も大きな効果として考えられているのが、青色が及ぼす心理的効果である。青色には人の副交感神経に作用して気持ちを落ち着かせる鎮静効果と、心理的に人を冷静にさせる傾向があるという。それが犯罪を抑制するほどの力になるのかと訝る人もいるかもしれないが、実際に自分の目で確かめてみれば分かるだろう。赤色やオレンジ色に比べ、青色を見ると気持ちが落ち着くはずだ。そして、この効果は街の景観にも影響を及ぼし、青色防犯灯設置後の住民アンケートの中には「街が綺麗に見える」「清潔に感じる」といった声が多数寄せられている。
しかし、当然のことながら全住民が青色防犯灯を受け入れているわけではない。同じアンケートの中には「寒々としている」「暗くて気持ち悪い」といった、慣れない光に対する否定的な意見も少なからずある。また、全ての街灯を青色防犯灯に変えたからといって犯罪が一斉に撲滅するとも言い難いし、導入したものの、まだ顕著な結果が得られていないという自治体も多い。青色防犯灯への理解とその効果を得るためには年月を重ねる必要があり、性急に成果が得られるというものではないのだ。
そのため、意見が賛否両論に分かれるのも仕方のないことかもしれない。だが通り慣れた道の街灯が、あるとき青色に変わっていたら、誰しも「あれ?」と思うだろう。そこから自分の街も防犯対策に取り組んでいることを知り、自らも監視人の一人となれるはずだ。そう、最も大切なのは、市民一人ひとりの防犯意識を高め「我が街の安全を守ろう」と思う気持ちを喚起することなのである。誰もが普段から防犯への意識(自分が被害者にならないための防衛対策であったり、街の治安を守る安全パトロールへの参加など)を高めることこそが、明るくて安全な街をつくり出す。青色防犯灯は市民の心に呼びかける、きっかけの一つにすぎないのである。
各市町村レベルから防犯レベルの高い街づくりを行えば、自ずと日本社会も生まれ変わるだろう。現在横行している凶悪な犯罪に歯止めをかけ、「世界で一番安全な国」との賞賛を取り戻すことが、日本社会を支える我々に求められる課題であるはずだ。青色防犯灯の光が、その道筋を照らし出してくれることを願ってやまない。