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脈々と受け継がれるものたちを尊ぶ目を──
高齢者は貴方の身近な“先生”です
脈々と受け継がれるものたちを尊ぶ目を── 高齢者は貴方の身近な“先生”です イメージ長く我が国の製造業界を支えてきた職人の熟練技、土地に伝わる伝統文化、暮らしの中で培われた知恵や遊びなど、脈々と受け継がれてきたものたち。それらが次代へと受け継がれることなく廃れ行く危機にある現状を憂い、各方面で伝承が後押しされている。仕事レベルから日常生活レベルまで、伝承の取り組みは様々。阻んでいるのは、人と人との交流が薄れている現代社会の風潮だと、我々は気づかねばならない。
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後継者・担い手不足、技術伝承が途絶える危機──専門技術を要する業界がこうした課題を抱えるようになって久しく、企業レベルではもちろん、国や自治体も伝承を後押しする取り組みを打ち出している。例えば、「現代の名工」。これは、厚生労働省が行っている表彰制度で、卓越した技能を持ち、その道で第一人者と目されている技能者を表彰するものだ。1967年の創設以来、技能者の地位や水準を向上させると共に、技能の世界で活躍する職人やそうした世界を志す若者の目標ともされてきた。金属加工・溶接・めっき工、染色・紡糸、植木職、木・竹・つる製品製造職、装身具等製造業など、19もの部門が設けられている同制度。職業訓練校の指導員として後継者育成に取り組む瓦職人、調理法はもちろんしきたりや作法まで伝承して幾人もの弟子を輩出している板前など、2009年は150名もの名工が誕生した。

こうして“名工”と呼ばれる人が毎年多く誕生するが、伝承が薄れてきているのは職人技と言われる技術だけではない。日常レベルに目を向けてみても、人々の暮らしや生活環境が変わったことで忘れ去られつつある知恵や文化、遊びがある。摘んできた草花を押し花にして栞にしたり、近所の竹藪から竹を切り出して竹とんぼをつくって飛ばしたり──そんな遊びを現代の子どもたちは知っているだろうか。今は、核家族化が進んだことで、以前なら日々の暮らしを通じて自然に伝承されていた昔ながらの遊びや文化が、伝承の機会を設けなければ廃れていく時代になった。香川県では、「むらの技能伝承士」という登録制度を設けている。

これは、農林水産業や農山漁村に関して優れた技術を有し、その向上に意欲的に取り組む65歳以上の高齢者で、技術の伝承や交流・指導活動をできることを条件に、「むらの技能伝承士」として登録する制度だ。稲・麦・野菜などの裁判管理に関する技術や林業・漁業に関する技術、染色技術、郷土料理や農水産加工といった食生活に関わる技術、竹細工や押し花といった工芸、お手玉や竹とんぼといった玩具をつくる技術、そして、集落行事や慣習、民話などを熟知していることや新しく開発・工夫した技術も登録対象となる。

市町村の特産農作物の栽培管理や青竹を利用した竹飯、しめ縄やわら草履などのわら細工の技能を伝えるだけでなく、入浜式塩田の作業唄・浜引き唄や民話を伝えていく。2010年5月には、竹細工やみそづくり、炭焼きなどの技能を持つ9人が新たに「むらの技能伝承士」として認定され、真鍋武紀香川県知事から一人ひとりに登録証が手渡された。同月時点で県内の登録者数は180人にのぼり、県や市町村、学校や自治会などが開催する講演会や研修会へ講師として招かれ、技術や知識を伝えている。

またこの伝承の取り組みでは、自身の経験や知識、技術など多彩な能力を発揮できる場があることが、伝える高齢者にとって生き生きと暮らす張り合いになる。内閣府では「エイジレス・ライフ及び社会参加活動」と称して、年齢にとらわれず自身の能力を活かして生き生きと生活を送る高齢者や地域社会活動などを積極的に行っている高齢者を選考、広く紹介。郷土に群生する「根曲がり竹」の特性を活かし、失われつつあるその工芸技術と生活文化の保存伝承に取り組む北海道に暮らす研究会、町の伝統的な踊りである「貝殻節踊り」を毎年多くのイベントで披露する鳥取県の民謡部などが、その事例だ。 「元気のない子どもたちが、次第に夢中になって目を輝かせていく。その瞬間がうれしい」と語る高齢者の目もまた、輝いている。

昨今人間関係が希薄化していると言われるが、それこそが伝承を阻む障壁なのだろう。著者は小学校時代、学校から帰るとよく祖母と散歩に出かけた。レンゲ畑などで摘んだ花を持ち帰り、水気を拭き取って本の間に挟んで待つこと数日──完成した押し花を貼り付けてお手製の便箋をつくったものだ。祖母が摘み取ったワラビやゼンマイ、ふきのとうなどの山菜が夕食のテーブルにのぼることも多く、自然と共にある暮らしを祖母から教わった。「これは昔から伝わるものでね」、そう語りかける高齢者の話に耳を傾けてはいかがだろうか。

【参考】
■厚生労働省HP:http://www.mhlw.go.jp/
■むらの技能伝承士:http://www.pref.kagawa.jp/agrinet/densyosi/index.htm
■政策統括官 共生社会政策担当HP:http://www8.cao.go.jp/souki/index.html
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