布川 まずは社長のこれまでの歩みからお聞かせ下さい。
佐藤 私は地元・宇都宮市出身で、中学生までは野球に打ち込んでいたのですが、地元のマラソン大会に参加したところ優勝してしまいましてね。それをきっかけに陸上競技の名門校から「インターハイや国体出場を狙える選手として我が校に来てもらいたい」などとお声をかけてもらうようになり、人生が大きく変わったのです。それで野球から陸上に切り替え、高校時代は長距離を専門として練習に励む日々を送りました。栃木県の国体強化メンバーに選ばれ、インターハイへ出場したり全国高校駅伝に2回出場した経験もあるんですよ。今の姿からは想像しにくいかと思いますけれどね(笑)。
布川 その後も陸上選手として活動を続けられたのですか?
佐藤 はい。高校卒業後は「NEC」に入社し、半導体のバイヤーを担当しながら陸上を続けていました。しかし強化メンバーという立場であっても、学生時代と違って陸上だけをしているわけにはいきませんし、次第に仕事の方に深い興味を持つようになりました。それで選手引退後は、バイヤー以外の経験を積もうと「東京エレクトロン」へと移り、半導体の開発や製造、販売を手掛ける部品営業職に従事しながら、製品の製造から販売までの一貫したプロセスを徹底的に勉強させて頂きました。そして、その集大成として平成15年に『アビリティークリエイト』を設立したのですよ。「東京エレクトロン」で学んだことが今の私の基礎になっていますし、当時ご指導頂いた皆様には本当に感謝しています。
布川 陸上選手から経営者へと華麗な転身を遂げられたわけですが、いざ独立してみていかがでした?
佐藤 品質を重視したいとの強い思いがありましたが、理想とする提携工場がなかなか見付からず、アイデアはあっても実際に稼働できないという厳しい時期が続きました。しかし、私は値段だけでは業界を生き残れないと考えていましたから、妥協することなく国内外の幾つもの工場を回り続けたんです。そして2年ほど前に、やっと我々が求める技術力を持つ工場と巡り会いましてね。それでようやく業務提携を結ぶ工場も決まり、開発や製造をスタートさせられるようになったのです。ですから、会社自体は平成15年に設立したとはいえ、実際に動き出したのは最近で、オリジナル商品を発売したのもまだ1年ほど前のことなんですよ。
布川 社長の仕事に対する情熱が窺えるエピソードですね。ところで、オリジナル商品というお話がありましたが、御社ではどういった商品を取り扱っておられるのですか?
佐藤 当社はコンピュータ周辺機器のメーカーとして、「Dream Flash」と名付けたオリジナルのSDカードをメインに、micro SD、mini SDなどの製造と販売を手掛けております。もちろん、オリジナル商品を出しても無名の後発企業ですから当初は見向きもされませんでした。しかし、ある大手企業さんとの契約がまとまったことで、大きな転機を迎えることになったんですよ。
布川 ほう。具体的にお聞かせ下さい。
佐藤 「Dream Flash」の発売から4カ月ほど経ったころに、「ソフトバンクBB(株)」さんとの契約が決まったんです。奇跡みたいなことで驚きましたね(笑)。
布川 携帯電話用のSDカードとして採用されたということですか?
佐藤 はい。最初は20社以上のメーカーがプレゼンを行い、そこから何度か審査を重ねながら4社にまで絞られました。そして当社はついに最終プレゼンまでさせてもらえることになったのですが、それが終わった後に、「他のメーカーさんはどのような発表をされたのですか?」と伺ったところ、「今日は御社しか来ていませんよ」と言われまして。不思議に思って、「では、結果発表は後日ということですか?」と尋ねると、「いえ、今日ここに来て頂いた御社と契約したいと思っています」と言われたんです。みっともない話ですが、嬉しさのあまりに涙が溢れて止まらなくなりましたね。帰りの車中では号泣したぐらいですよ(笑)。
布川 数多のメーカーさんと競い合い、御社が契約を勝ち得た勝因は何だったとお考えでしょう。
佐藤 他の多くのメーカーさんが自社ブランドの知名度を活かしたプレゼンをされる中で、当社はとにかく品質の良さを分かってもらえるように努めたんです。知名度と実績がないからこその戦略でしたが、それが逆に良かったのではないかと思います。
布川 やはり最終的に一番大事なのは質なのですね。社長がこだわって工場を探し続けられた結果だと思います。
佐藤 ありがとうございます。お陰様で今では多くの人に当社の名前を知って頂けるようになりましたし、本当に嬉しく思っております。
布川 では、今は「ソフトバンクBB(株)」さんのお仕事をメインに?
佐藤 そうですね。ただ、メーカーとしては「Dream Flash」のみならず、もっと幅広く展開したいと思っていますので、次なる取り組みも進めていこうと考えております。
布川 既に具体的な構想はお持ちなのですか?
佐藤 ええ。徹底した販売戦略に基づいた、痒いところにも手が届くようなコンサルティングが伴った販売スタイルを確立させたいと思います。また一方ではソフト面にも力を入れていき、コンテンツ・ゲーム・ケータイ小説(電子書籍)を収納した製品や、新たに発売し、「Star Memory」と命名したオリジナルのSDカードの販売にも力を入れていこうと考えていますね。そして将来的には各企業さんと取引するだけではなく互いに成長できるようなwin-winの関係になれるようにしていくことが目標です。そのためにもまずは当社の基盤をさらに固めていくことが必要ですから、攻めの姿勢を取りつつも盤石な組織と販売体制を作り上げていきたいと思います。
布川 組織作りを進めるためにはスタッフ教育が重要だと思いますが、どのような育成方針を採られているのでしょう。
佐藤 私がスタッフに望むのは2つだけです。それは「粘り強く取り組むこと」と、「常に基本に立ち返って物ごとを考えること」。そして、いわゆる5W1Hを追求し続けていけば、自ずと答えが見えてくると話していますね。その答えが見つかるまで、悩んでチャレンジし続けることが、成長過程において最も大事になると信じています。
布川 お話も尽きませんが、最後に今後に向けての意気込みをお願いします。
佐藤 どんなことでも最初の一歩を踏み出すのは勇気が要りますが、困難を目前にしても決して逃げずに立ち向かっていきたいですね。その一歩で未来は大きく変わってきますから、スタッフとともにこれからも常に前を向いて歩んでいこうと思います。コンマ1秒の壁を乗り越える努力を続けていた陸上選手時代に培った不撓不屈の精神を武器に、粘り強く着実に実績を積み重ねていきますよ!
布川 さらなる飛躍を期待しています。 |